【ネタバレあり】村上春樹著・「騎士団長殺し」登場人物・キーワードまとめ

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先日、「騎士団長殺し」の読みたてほやほやの感想を書きました。
合わせて、備忘録とファースト・インプレッション的な感想を交えつつ、人物についての覚書をしようと思います。
いろいろ間違っているところがあると思いますが、それも一つの第一印象ということで・・・。
(都合のよい言い訳)

【ネタバレあり】村上春樹著・「騎士団長殺し」を読みました。世界中が待っていた書き下ろし長編!
約1か月前からカウントダウンされていた村上春樹さんの最新刊・「騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編」、「騎士団長殺し :第2部 遷ろう...
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登場人物・現実世界の人々

主な物語は、2011年の数年前(おそらく00年代中盤)を舞台にしている。

ぼく
36歳・男性・画家。
12歳で亡くなった妹の小径(コミ)がおり、コミとの思い出からか、閉暗所恐怖症。
また、妹が亡くなって以降家の中がぎすぎすとしだし、両親とはほとんど連絡を取っていない。
結婚生活6年目にして、妻のユズから離婚を突きつけられている。
自分の目指すところではないものの、肖像画家としてそれなりに評価されており、一応「絵で飯が食えている」状態。
妻のユズから離婚を言い渡されたことで、古いプジョー205に乗って北海道・東北へと旅に出る。
旅先で、物理的には離れた距離に居ながら、妻のユズを妊娠させた夢と実感を得る。

旅を終えた後、雨田具彦がかつて使っていた、小田原の谷の入口にある山の上の家(このあたりは別荘地)に住むようになる。
また同時に、小田原駅近くにある絵画教室で、週に2回子供や大人に絵画を教えるようになり、その間に、2人の人妻と肉体関係を持った。

肖像画を描くのはやめようと思っていたが、諸事情から免色の自画像を描くことになる。
雨田具彦が隠しておいた「騎士団長殺し」の絵を見つけ、面色とともに山の上の家の敷地内にある祠の裏の穴を開いたことで、小人の騎士団長が見えるようになり、さまざまな奇妙なことを体験する。

秋川まりえ失踪を解決すべく、小人の騎士団長を殺し、この世ならざる地底空間を通り抜ける。

最終盤では、ユズとやりなおすことにして、ユズの娘・室(むろ)と3人で暮らしている。
また、生活の糧を得るために肖像画を再び描くようになっている。

免色渉(めんしきわたる)
珍しい名字のメンシキさん。54歳。男性。
ぼくの住む谷の向こう側にある豪邸に一人で住んでいる。
自分の情報をいたずらに探られない為か、外部の人間が彼について知るのはなかなか困難。
本人もそれを望んでいる。
しなしながら、本人に聞けはたいていのことは応えてくれる。
自分の好奇心を満たすためならば、どんな出費もいとわない。
いつも穏やかで調和のとれた印象があるが、ものすごくキッチリしており、結婚には向かない人間。(本人も自覚している)

ジャガー2台を含む車を4台持っていたり、テニスコートにプールつきの家に住んでいたり、二人だけの夕食の為にプロのバーテンダーと料理人を家に来させたりと、プリティ・ウーマンもびっくりのお金持ち。
以前は情報系の企業など(おそらくいろいろな会社を持っていた)を営んでいたが、今は引退して、運用益だけで生活している。
若々しいが、頭だけがキレイな白髪。
常に入念に下準備をしてからぬかりなく物事を進めていく性格と手腕を持っている。
以前、仕事のトラブルで東京拘置所に400日以上拘留されていたが、無罪になった経験がある。
底の知れない人物ではあるが、予想外のことに慌てたりと人間味もある。

10数年前に愛し合っていた女性に去られている(と後から分かった)が、その最後の行為によって、彼女は自分の子どもを身ごもったのではないかという可能性を考えている。
が、それをはっきりさせるつもりはない。

山の上の大邸宅に半ば無理やり引越してきたのも、谷むかいにある秋川まりえの家を観察したいから。
肖像画断筆宣言をしていたぼくに、高額で肖像画を引き受けさせた。
肖像画完成の際に、ぼくに、秋川まりえの肖像画を描いて、そこに偶然をよそおって同席させてほしいと頼む。
(それはそれとして、完成した自分の肖像画は本当に気に入っていた模様)

その甲斐あって、なんとかうまく秋川まりえと秋川笙子と親しくなる。
その後、秋川笙子と付き合うようになった。

(娘かもしれない)秋川まりえから、知らないとはいえ「(きっちりしすぎてて)絶対一緒に暮らせない」と心の中で評されてしまう、ちょっぴりかわいそうな人。

普段はすべてを予測の範疇にできてしまうようなゆったりとした態度を取っているが、思いもよらず秋川まりえと会うことになったときは、アワアワして意味もなくジャガーのタイヤの空気圧を計ろうとするなど、ギャップ萌えを発動させた。

雨田具彦(ともひこ)

日本画家の重鎮。92歳。
以前は高い評価を受けている画家であるものの、人嫌いでほとんどメディアにも出ず、人里離れた小田原の家(現在のぼくの住まい)で創作活動に励んでいた。
90歳を超えた現在の時点では、痴呆を患い、伊豆高原の高級療養所に入院している。

戦前に、阿蘇の大地主で、政治的にも有力な一家の二男として生まれる。
画家としての才能は確かであり、西洋画の新鋭として青年時代にウィーン留学を果たす。
そのころ、ウィーンはアンシュルス(ナチス・ドイツによるオーストリア併合)のまっただ中だった。
当時、雨田具彦は、弟を自死に追い込んだ戦争を憎んでおり、ナチスに抵抗する組織に属していた。
そこで持ち上がった要人暗殺計画に関わっていたが、結局それは未遂に終わり、関係者(雨田具彦の仲間と恋人)はみな強制収容所へ送られ、拷問の末命を落とすことになった。
そして雨田具彦だた一人が、何も口外しないことを条件に無傷で日本へ返された。

戦中の沈黙の数年を経て、西洋画家から日本画家へ転身。
日本画の大家として名をなす。

若い頃はかなりの遊び人だったようだが、ウィーンから帰国してからは一転して人ぎらいになり、創作活動に打ち込むようになった。
中年を過ぎた頃に、思い出したように結婚して息子の政彦をもうけた。

痴呆がすすみ、長らく何も認識しない穏やかな世界にいたが、ぼくと騎士団長によって、一時的に認識力が戻る。
ぼくと騎士団長による「騎士団長殺し」の再現の場面を見とどけた後、数日後に安らかに息を引き取った。

「騎士団長殺し」を描いた張本人。

秋川まりえ
13歳の中学1年生。
無口だが、すぐれた芸術的慧眼を持つ美少女。
免色の娘かもしれない少女。
胸が小さいことをいつも気にしている。

家庭環境もあって、人に心を開くことはあまりないが、ぼくには不思議となついている。
免色やぼくの住む山に幼い頃から住んでおり、山のことは知り尽くしているらしい。

免色がまりえの家を双眼鏡で覗いているのに気づいている。
物語の後半で、行方不明になる。
(実際には、好奇心から免色の家にしのびこんで出られなくなっていた)
免色の家で悪しきなにかに見つかりかけたところを、小人の騎士団長に救われる。

最終章では高校生になっており、騎士団長のことも夢だったのではないか、と思うようになっている。

秋川笙子(しょうこ)
まりえの叔母。まりえの父の妹。30代後半くらい。
まりえの母が亡くなった際、まりえの世話を引き受けて、結局そのまま保護者的役割として一緒に暮らしている。
もともとは、東京で大学病院の学長秘書をしており、長年つきあった恋人もいたが、まりえの母親が亡くなった頃に別れた。

育ちのよさを感じさせる上品さと美しさ、そして豊かな胸を持つ女性。
ジャガーが好き。
後に、免色とつきあうようになる。

まりえに言わせると、その育ちのよさゆえに、人に裏切られたり深く傷つくということにとても弱いという。

ユズ
ぼくの妻。二級建築士。33歳。
もともとぼくは、ユズの友達と付き合っていたが、ユズに強烈に惹かれて、ユズと結婚した。
世田谷区砧の銀行関係者の多い家に生まれ、ぼくと結婚することで実家とは不仲になった。

強烈な面食いで(ぼくは例外)、顔がいい男性を見ると抗えなくなる。
物語序盤では、不倫とそれに伴う妊娠のため、ぼくと離婚しようとしている。
が、結局離婚届は出しておらず、結婚生活は第二期へとうつることになる。

ユズ自身はまだ妊娠・出産を望んでいなかった。
また、細心の注意をはらって避妊していた。
妊娠7ヵ月の時点で不倫相手の男とは別れている。
シングルマザーとして子どもを育てる気でいた。

ぼくは東北での一人旅の途中に、どこか別の空間を通じてユズを妊娠させたという実感を持っている。

まりえの母(免色の昔の恋人)
まりえを生んだ母。
身長155センチくらい、バストは65Cの小柄で美しい女性。
十数年前、免色と相思相愛の仲だった。
免色からは「自分は結婚するつもりはない」と告げられていたが、それでも愛しあっていた。
なんらかの切羽詰まった事情を抱えており、秋川まりえの父(秋川笙子の兄)と結婚することになり、その直前、免色に会いにきて濃密な交わりをかわす。
その後面色の前から姿を消して、2ヵ月後秋川まりえの父と結婚し、7ヵ月後にまりえを生んだ。
まりえが幼い頃に、梅林を散歩中、スズメバチに刺されてアナフィラキシーを起こして亡くなった。
このことが原因になって、まりえの父は様変わりし、まりえの家庭は崩れてしまう。
(死亡後、弁護士から免色に届いた手紙と一連のできごとから、免色は「まりえは自分の子どもではないか」と思っている)

雨田政彦
雨田具彦の一人息子。独身。
ぼくの大学時代からの数少ない友達。
かつては、美大に進んだことも有り、偉大すぎる父を持つ苦悩もあったようだが、今ではその気持ちに折り合いをつけている。
芸術を生み出す才能はさほどなかったが、芸術を見抜く能力には秀でており、社会的にも成功している。

父・雨田具彦は、息子にとっては面倒なオッサンであったらしく、あまり父とのよい思い出はない模様。
かといって父を恨む訳でもなく、心のどこかで父に認めてもらいたがっているが、そこまで執着しているわけでもない。
ぼくが住む家を、雨田具彦があまりにも染み付いているという理由でちょっと苦手に思っている。
(とはいえ、子どもの頃の思い出などもあったりと、嫌ってはいない)
人から秘密を打ち明けられることが多く、ユズと不倫相手の男両方から相談を受けていたため、ぼくに対して申し訳なく思っていた。
ぼくとユズがまたうまく行くことを願っている。

雨田家がふせておきたかった、雨田具彦と雨田継彦の話を断片的ながら知っており、ぼくに語った。
精神のバランスが非常にとれている男性。
なにかと浮世離れした登場人物が多い中で、比較的地に足のついた人間であり、彼が出てくるとちょっとほっとしたり…。

雨田継彦(つぐひこ)
雨田具彦の弟。
3兄弟の末っ子で、将来を嘱望されたピアニストだった。
音楽大学在学中ではあったが、書類の手違いから荒々しくて有名な師団に配属され、南京入城(南京大虐殺)に立ち会ってしまう。
その際、度胸をつけろと3人の人間の斬首をさせられてしまう。
それらの軍務経験により、繊細な芸術家の心を破壊されてしまい、20歳の時、自宅の屋根裏で自死した。

※作中で、「悪霊」(ドストエフスキー)のキリーロフについて触れられている部分があります。
たしか、雨田政彦がぼくに対して「「死ぬことで自由を証明する」っていったのは誰だっけ?」というような問いかけをしています。
キリーロフは「完全な我意とは、自殺である」という思想を持っている人物であり、雨田継彦の自死はキリーロフを示唆していると思われます。

小径(こみち)
ぼくの妹。ぼくはコミと呼んでいた。
生まれつき心臓が悪く、12歳の時に死去した。
ぼくとは体の弱いコミを庇護する対象と思っており、とても仲が良かった。

秋川まりえの父(秋川笙子の兄)
名義上は秋川まりえの父。(血縁上は不明)
秋川家は小田原周辺の大地主であり、それを継いで土地経営などの会社を営んでいる。
が、社員にほとんどをまかせて、本人は不在なことが多い。
免色いわく、良家の人間らしく脇が甘いらしい。

秋川まりえの母、秋川まりえとともに普通の家庭生活を営んでいたが、妻(まりえの母)が突然亡くなったことにより、彼の心は深く傷ついてしまう。
まりえの母が亡くなった梅林をすべて伐採し、その後評判のよろしくない新興宗教にハマってしまい、絶賛カモられ中。
教団の為に道場を建て、連絡がつきづらく、自宅にもろくに帰っていない。
そのため、秋川まりえは主に秋川笙子に育てられている。
最終章で成長した秋川まりえは、「お父さんと2人で暮らすのはありえない」と発言をしている。

免色がまりえを心配している理由の一つが彼である。
作中には、名前とちょっとした行動しか登場しない。

ぼくのセックス・フレンド その1
小田原駅前の絵画教室に通っていた。教師の妻。
DVを受けており、性的快感を全く受付けない。
作中にはほとんど登場しない。

ぼくのセックス・フレンド その2
小田原駅前の絵画教室に通っていた。何不自由ない暮らしの主婦。
娘が2人いる。ぼくはその1と別れた後に関係を持つようになった。

主婦情報網を使って、謎の男・免色の噂を色々と集めてきた。
週に1,2度ぼくの家に来ていたが、ある日突然目が覚めたように「もう会わない方がいい」と別れを告げた。
理由の一つに、上の娘が部屋から出てこなくなった、夫が浮気を疑っている、ということがあげられていた。

ユズの浮気相手
すばらしいイケメン。仕事もできるし性格もいい。
が、女性の趣味が常軌を逸している。
ユズと結婚すると喜んでいたが、ユズからきっぱり断られてショックを受ける。
雨田政彦の同僚。
ユズとのことを雨田政彦に相談していた。

室(むろ)
ユズが生んだ娘。
2011年時点で保育園に通っている。
ぼくは、騎士団長やドンナ・アンナたちからの恩寵として室を授かったのだ、と思っている。

登場人物・現実外の人々

騎士団長
絵画「騎士団長殺し」の騎士団長の姿を借りた「イデア」。
身長60センチほど。
「騎士団長殺し」の絵画から姿を借りているため、飛鳥時代の服装をしている。
ぼくの家にある穴に閉じ込められていたが、穴が解放されたことにより姿をあらわせるようになった。

基本的には、ぼくにしか見えない存在。
ぼくに寓意に満ちたアドバイスを与える。
招かれた場所にしか行けない、しゃべってはいけないことがあるなど、行動には制約がある。
例外的に、雨田具彦と秋川まりえには見える。

秋川まりえを救いたい、というぼくの願いをかなえるため、雨田具彦の目の前で「騎士団長殺し」と同じ場面を再現するようぼくに言う。
ぼくの包丁に心臓を刺し貫かれて息を引き取った。

飛鳥時代を舞台にした絵画なのに、名前が「騎士団長」である理由は、場面がドン・ジョバンニをモチーフに描かれているから。
(ドン・ジョバンニがドンナ・アンナを夜這いにきて、駆けつけた父(騎士団長)が殺されてしまうシーン)

顔なが
絵画「騎士団長殺し」の片隅に描かれている謎の男。
絵画「騎士団長殺し」では、地中からフタを持ち上げ、目撃したことに驚いている。

ぼくと騎士団長が、絵画「騎士団長殺し」を再現した事によって、雨田具彦の病室に出現した。
本人いわく、「低級のメタファー」。
メファターを名乗る割に、うまい隠喩を使うことができない。
70㎝ほどの気の弱い男。

ぼくは、まりえを救うため、顔ながが出てきた穴に無理やり入り込んで地底世界を進むことになる。

ドンナ・アンナ
地底世界で力尽きそうになっていたぼくを、コミとともに導いてくれた、小人の美しい女性。
絵画「騎士団長殺し」に描かれている。

ぼくは後日、ドンナ・アンナは雨田具彦がウィーンで別れ、その後強制収容所で拷問死した恋人だったのではないかと思っている。

作中に出てくる絵画

騎士団長殺し
飛鳥時代を舞台にしているが、ドン・ジョバンニをモチーフにしている日本画。
雨田具彦が描き上げ、屋根裏に厳重に隠していた。
ぼくが思うに、間違いなく雨田具彦の最高傑作の1枚だが、強い力をもった絵であり、危険な何かを引き寄せてしまいかねない磁力がある。

この絵を見たことがある人間は、作者である雨田具彦、ぼく、秋川まりえのみ。
秋川笙子も見ているはずだが、彼女は特に印象を抱かなかった。

白いスバル・フォレスターの男
ぼくが描いた、東北のファミレスで出会った剣呑な男を描いた絵。
「お前がしたことはすべて見ているからな」というような、不穏なメッセージ性がある。
描きかけだが「完成させるな」と絵から訴えかけてきており、ぼくは未完成のまま「騎士団長殺し」とともに屋根裏にしまいこんだ。

白いスバル・フォレスターの男は、悪しきものの象徴として時折作中にあらわれる。

雑木林の中の穴
ぼくが描いた、騎士団長が出てきた穴の絵。
とても写実的。
どことなく、女性器を思わせる。
まりえを救う冒険から生還したぼくを助けてくれた免色に、お礼として渡した。

免色渉の肖像画
免色がぼくに依頼して描かせた肖像画。
依頼料は思わず口笛をふきたくなるような高額。
いわゆる写実的な肖像画とはちがうが、免色はとても気に入っていた。
免色の私室にかけられている。

秋川まりえの肖像画
免色がぼくに依頼した肖像画。
当初は免色がひきとる予定だったが、依頼ではなく、ぼくが自発的に描き、譲りたいと思えば免色に譲、という形で描かれた。
未完成の状態が完成、ということで、最終的には秋川まりえに贈られた。

 

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